こんなふうに、結局のところわたしたち似たもの同士だし。こんなふうに、流れ、うずまき、ぶつかりながらまじりあい、あわだつ分子のひとつひとつだし。
ペイズリー柄の緑色の安いバンダナを買いたかっただけなのに。ショッピングモールはぐるぐると曲線を描いてうずまき、迷い、流れ、ぶつかり、しまいには手を繋いだ相手がいつのまにか別人になっている始末。
複雑に曲線を描く遊歩道をめぐり、地図を眺め、迷い、植え込みの椰子の間を抜け、入り組んだ狭い脇道の奥でようやく見つけた小さな雑貨店に入ると、店の内部には思いがけなく広大な通路があり両側に店が並ぶショッピングモールになっていてまた迷ってしまう。道案内の地図を開き、指差しながらあっちだこっちだと遊歩道を横切り、植え込みの椰子の間を抜け、さんざん歩いてようやく見つけた小さな雑貨店に入ると、店の内部には思いがけなく広大な通路があり両側に店が並ぶショッピングモールになっていて、通路はぐるぐると曲線を描いてうずまき、迷い、流れ、まじりあい、植え込みの椰子の間を抜け、それからようやく見つけた小さな雑貨店に入ると、店の内部には思いがけなく広大な通路があり両側に店が並ぶショッピングモールになっていて。
すっかり疲れて帰途に就けば、通路にあるいくつもの自動ドアを開くたび遊歩道も両側に並ぶ店も植え込みの椰子もどんどん小さくなっていって、しまいにはショッピングモール全体が手のひらの上に平たくおさまってしまい、小さくなったそれを地図として見下ろしながらショッピングモールの入り組んだ遊歩道を歩いていって。ぐるぐると迷い、流れ、ぶつかり、すっかり疲れて帰途に就けば、自動ドアを開くたび遊歩道も両側に並ぶ店も植え込みの椰子もどんどん小さくなっていって、しまいにはショッピングモール全体が手のひらの上に平たくおさまってしまい。
結局のところ、無限に大きなショッピングモールは無限に小さなショッピングモールでできており、無限に大きなペイズリーは無限に小さなペイズリーでできており、無限に長い物語が無限に小さな物語でできているように、歴史が歴史でできているように、宇宙が宇宙でできているように。結局のところ、どこまでいってもわたしたちはわたしたちでできているのだし、こうして流れ、うずまき、ぶつかりながらまじりあい、あわだつ分子のひとつひとつなのだし。
2024年9月 詩誌「hotel第二章」