静かな蛇口ー
ぱるむ


洗顔をする瞳に、
浅い瞼の絶望に埋もれた
切れ長の光が映り、
思慮の欠けたガラスが
あたりいちめんにとびちった。
自分の頬を勢いよく
引っ叩きながら その薄汚れた血液で
言葉をかきあつめた。

耳が血だらけになり、
唇の側に口紅の真似事をし、
その指でだれかに 生きるむなしさの
手紙を書かなければならないと
鼻がおかしな方角へ捩じ曲がりながら
ひっしに床に倒れ込んだ

髪がベタベタに床に張り付いているのに
植物の萎えがやたらと目に入る。
焼かれた女の瞳が、わたしをみつめていた。
わたしはあまりにも 清潔で居たいらしい。
まだ水を求めている。




自由詩 静かな蛇口ー Copyright ぱるむ 2025-05-03 21:04:38
notebook Home