蟹モラ
ヤギ

モラ(子)


−背骨−
黒焼きのサンマの背骨噛みながら十三回忌想う子二人


−ゼリー−
満ち欠けも両手離しで迎える夜月花げっか固めたゼリーに満ちて


−産毛−
産毛吹く桃贈られて種を植え子の子食うかと仰ぎ積雲


−モラモラ−
夏野菜モラモラ茹でて塩を振り畑に運ぶみんなモラモラ


−蜘蛛の仔−
くさむらぜる蜘蛛の仔吸い込んでむせて吐く子とそれを笑う子


−アスファルト−
熱知るかアスファルトに頬を焼き走り寄る子の眼に映る夏


−バレリーナ−
バレリーナになりませんかの看板随分前に外された跡


−猫じゃらし−
両腕に抱えて帰った猫じゃらし花瓶とコップとブーツに挿して






−斜頸の写経−
竜巻の心臓に杭打ち入れて斜頸の写経一歩でも上れ


−蟹バリズム−
噛みついた日々は殻ごと腐り死に飲み下す友蟹バリズムに


−パリの張り裂け−
雑踏に打ちつける波胸耐えず「異人」と吠えるパリの張り裂け




※月花…月の光のこと
※モラ(子)のお題はザラメさんから、蟹のお題は麻野梵四郎さんから頂き詠みました



短歌 蟹モラ Copyright ヤギ 2005-05-28 21:10:03
notebook Home 戻る  過去 未来