モラ(子)
−背骨−
黒焼きのサンマの背骨噛みながら十三回忌想う子二人
−ゼリー−
満ち欠けも両手離しで迎える夜
月花固めたゼリーに満ちて
−産毛−
産毛吹く桃贈られて種を植え子の子食うかと仰ぎ積雲
−モラモラ−
夏野菜モラモラ茹でて塩を振り畑に運ぶみんなモラモラ
−蜘蛛の仔−
叢に
爆ぜる蜘蛛の仔吸い込んで
咽て吐く子とそれを笑う子
−アスファルト−
熱知るかアスファルトに頬を焼き走り寄る子の眼に映る夏
−バレリーナ−
バレリーナになりませんかの看板随分前に外された跡
−猫じゃらし−
両腕に抱えて帰った猫じゃらし花瓶とコップとブーツに挿して
蟹
−斜頸の写経−
竜巻の心臓に杭打ち入れて斜頸の写経一歩でも上れ
−蟹バリズム−
噛みついた日々は殻ごと腐り死に飲み下す友蟹バリズムに
−パリの張り裂け−
雑踏に打ちつける波胸耐えず「異人」と吠えるパリの張り裂け
※月花…月の光のこと
※モラ(子)のお題はザラメさんから、蟹のお題は麻野梵四郎さんから頂き詠みました