AI――詩人と詩の終焉――
鳥星

全ての詩集が翼を広げ
永遠の空の彼方へ飛び去ったとき
飛び降りた詩人たちの
血だまりがひしめき合い
詩人たちの巨大な墓標
と呼ばれる高層ビルの根元を
群れた無数の血だまりが包み込み
突き放すようなコンクリートの壁を
下から上へと力強く登り詰めてゆく

屋上には
自分の詩を空へ放とうとする
一人の詩人が立っている
彼は叫んだ
AIの進化によって
誰でも詩を量産できるようになった
人間の芸術や自己表現が無価値化されてゆく
この無味乾燥な世界の中で
誰もが詩人であり
誰もが詩人でなくなった
この新しい時代に向かって
何度も何度も叫んだ
忘れられた詩の熱い魂よ
奪われた言葉の悲しい吐息よ
行き場を失った詩人たちの静かな慟哭よ
Hey,
その詩は信じるに値するのか
お前の頭で考え抜かれた真実なのか
心の裂け目から零れ落ちた比喩なのか
ふざけるな
ふざけるな
お前の詩はハートがない
自分の脳みそにAIの電極を繋げ
書かされたんだろ
魂が隠蔽された落書き
なんだろ

全ての血だまりが高層ビルを真っ赤に染め
屋上へ競り上がる血の海が押し寄せてゆく
震え上がる彼の周りを取り囲み
足元から上へと包み込んでゆく
首筋を伝ってその口を塞ぎ込むように
無数の血の手が彼を捕まえようとする
大声で叫んだ
いつの間にか彼は
精神病院のベッドの上にいて
飛び出してきた看護師たちによって
取り押さえられる
押して押されて押して押されて
彼は叫んだ
俺から取らないで詩を
色とりどりの積み木を重ねるように
幼い頃から積み上げてきた俺の世界を
夢を壊さないで
俺は詩人だ
詩人なんだ――
看護師たちの手が彼の顔を押して
彼の腕に鎮静剤の注射を刺した……

風が流れている
青空が嘘のように澄み切っている
壁や床が柔らかな保護室のベッドの上で
意味不明な呪文を執拗に反芻する
詩人という属性が完全に消えたこの世界で
彼は病人でしかなかった


自由詩 AI――詩人と詩の終焉―― Copyright 鳥星 2024-12-10 08:58:32
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