光、往路、
湯 煙
○豆腐
しかし。
まがいものにあふれたこんな世の目と鼻の先を一歩二歩三歩……とことこ歩いたすぐ横丁にあるスーパー。顔なじみの店員。
「いらっしゃい」
「どうも」
「いつもの?」
「うん…」
昨日も今日も、たくさんの商品にあふれ。そこに本物がまぎれている。数は少ないがそいつを見つけ、(おお!)
おもわず声を上げてしまう。
立ちすくんでしまう、のだ。
豆腐に醤油。
泥に混じる金の砂が輝く。
───あの道この道、とことこぽつぽつ、やってきた、
出会いの瞬間、ここにいる意味。
棚に律儀に並ぶもの言わぬ食品たちの顔、
貼り付けられたラベルに流れる墨の字。
原材料は混じりけがない。値段は高価にはちがいない。
逡巡、迷い、さまざまな比較とやらをはねつける光だ。
オレは、この国は、そしてこの街は大丈夫だろう? と、頭を巡らせながら家路を辿るんだ。
○SEa HoUR
タワーレコードの海。
ぶくぶくあぶく銭が生まれては消えていく。
店内にまぎれるうち息が詰まる、
あふれかえる棚に隙間なく並列された律儀な音盤たち。
しかし、この資本の無様はなんだ?
ここで右往左往とさまようオレはなんだ?
水の泡、水の時間、水。
たしかに、目的らしきものを持ち、求めやって来た。
そうしてやがて逃れ逃れて最後は押し流されてしまう。テブラノオレ。
あのケバい専用の袋もまた、白壁に吊るされ、ガラスをつらぬく朝の静謐に射たれてしまう、とき、神々しいまでの姿、影、光、
生きる、 生きている、 そして