素振りなら負けない
たもつ



部屋の中で素振りをしていると
外は激しい雨が降っていて
どこかとても遠いところから
僕の知らない動物の鳴き声が聞こえる

シマウマはたてがみも縞模様なのだと
テレビ番組でやっていたが
たてがみをもたない
そいつはもっと他の動物

僕の素振りは続き
雨はさらに激しさを増し
床上まで浸水し始めても
動物は相変わらず鳴き止まない
もしかしたらそれは鳴き声ではなく
泣き声なのかもしれない
とすると僕から滴り落ちる汗のいくつかは
涙なのかもしれない
なんて
そんなセンチメンタリズムは
とっくに捨ててしまった

水位は既に胸のあたりまで達し
動物の溺れていく音がする
それでも僕は一人
君も
あなたも
おまえも
いない部屋で
素振りを続ける
素振りなら負けない





自由詩 素振りなら負けない Copyright たもつ 2005-05-24 10:48:12
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