素振りなら負けない
たもつ
部屋の中で素振りをしていると
外は激しい雨が降っていて
どこかとても遠いところから
僕の知らない動物の鳴き声が聞こえる
シマウマはたてがみも縞模様なのだと
テレビ番組でやっていたが
たてがみをもたない
そいつはもっと他の動物
僕の素振りは続き
雨はさらに激しさを増し
床上まで浸水し始めても
動物は相変わらず鳴き止まない
もしかしたらそれは鳴き声ではなく
泣き声なのかもしれない
とすると僕から滴り落ちる汗のいくつかは
涙なのかもしれない
なんて
そんなセンチメンタリズムは
とっくに捨ててしまった
水位は既に胸のあたりまで達し
動物の溺れていく音がする
それでも僕は一人
君も
あなたも
おまえも
いない部屋で
素振りを続ける
素振りなら負けない