畜獣の腑
医ヰ嶋蠱毒

口腔を充す微かな鉄の味が
わたし達の青褪めたアレゴリーだとして
ビニールの膚に詰まっていたものを想像してみろ
健啖家は贋金を着服し
屠殺人がアスクレピオスの悪戯を薬液に浸す
わたし達がただ豚ならば何処までが少女、何処からが獣
シャロン・テイトを葬る血文字に唆されて
轢断された指とドナーカードで奴隷の生死を占う為に
鉄路にエポニムを縛り付けた私達は畢竟
ベルゼビュートには成れぬまま
象嵌と逆立ちの犬が統禦する素敵な憎悪の麾下に
呂太后でさえ思い至らぬほど
コギト・エルゴ・スムは残酷な命題であろう
晒し首にネルガルの眷属が蝟集する頃
同祖の技法を以ってヒトを諦観せよ
生きる為に喰う
わたし達がただ豚ならば少女に非ず、此処からが獣
オール・アニマルズ・アー・イクォール
オール・アニマルズ・アー・イクォール


自由詩 畜獣の腑 Copyright 医ヰ嶋蠱毒 2024-10-14 20:11:48
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