帰り路
リリー

 昨日の夕方
 毛虫が落っこちてきたら嫌だなと思って
 茂る枝の下を避けて立ち
 青信号を待った 
 公園の桜の木

 毎年春に花雲を愛でて
 木は すっかり街中で溶け込んだ住人
 だから今朝も其処に
 立っていたはずでした
 公園が取り壊されて更地になる事は分かっていても
 道路沿いの木まで撤去してしまうなんて
 想像していなかった

 帰宅時に異様な空間の広さへ目を疑い
 あるはずの木が、根っこから引き抜かれ
 切り倒されて惨たらしく
 八つ裂きに晒されていました

 桜の木は知っていたのでしょうか?
 人間を、その残忍さを
 どんなおもいで街を
 行き過ぎるわたしたちを見ていたのでしょう

 これを当然のことのように
 移りゆく光景を目の端にとめて人は皆、
 帰り路を急ぐのです。
 
 
 
 


自由詩 帰り路 Copyright リリー 2024-09-28 07:08:13
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