深夜
秋葉竹
少女がシンデレラに憧れるのは
深夜、日本家屋の階段で。
とてもちいさな階段には
昼間の寂しさがころがる音がするから
ガラスの靴をひろえなかった少女は
夢の中へいってみたいと憧れる。
部屋の壁にヘタクソな自画像を描いた日
両親にとんでもなく怒られた
けれど月光の射すその部屋には今も
その自画像が消されずに残っていて
その瞳はキラキラと光っていて
憧れは叶うという夢を信じている今も。
深夜眠れない少女は階段に座り込み
シンデレラ、シンデレラ、と
沈む夕日の色の瞳を閉じて呟いている
乾いた闇と虹色の夢が交差する
ちいさな階段は切り取られた静けさで
少女をくるみこみ、抱きしめてくれている。