「自己犠牲」
足立らどみ



足を切った
家族を飢えさせないため
自分が餓死するのを防ぐため
あのときは仕方なかった

もう一本、足を切った
自分の不甲斐なさに呆れながら
まだ幼かった子どもは
なにも知らずに平らげた

私は強い魔物なのだろうか
二本の足は生えてきた
パートタイマーの妻は
相手にもしてくれなかった

静かに生きてきただけなのに
何が悪かったのだろうか
歳をとり振り返った私は
失足感は残るものだと知った
 
 
2024.09.26


自由詩 「自己犠牲」 Copyright 足立らどみ 2024-09-26 08:21:23
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