あ、それ僕の、
アラガイs


サラリーマンだから贅沢は言ってられないのです。
久しぶりに息子を連れてヘルスセンターへ出かけてみようと思います。
本当は何処か温泉街の露天風呂のほうがいいんだけどね。
 僕らはそそくさと脱衣所で裸になって大浴場に浸かります。それから、
機械で少しトレーニング。そのあとで、
硬くなった身体をマッサージでほぐしてもらうのだ。
その間、息子は室内遊戯で遊んでる。  ああ、意気も帰るよな心持ち。
        おーい!風呂入るぞ!
息子はぜえぜえと走ってパッパッと脱ぎました。ああ、極楽極楽甦るよなあ。
お湯を洗い場で三度掛け直します。  出るぞー
息子は熱い湯に飽きてたのかな
もう脱衣所で着替えに入ってました。
バスタオルを取ると?あれ?    パンツが無いぞ
辺りのボックスを見廻しました。 すると
痩せたあたまの薄いおじさんが体重計に乗っていました。
よく見れば、Calvin Kleinの文字入り
色も同じじゃないか。
僕は少し怪訝な表情で指さしました。
                   あ、それ、僕の?
パンツの先にはおじさんの色がしっかり付いてました。

その二

これは職場のけんちゃんから聞いた話し。
ある夜の日、仕事から帰る途中何か大きな物音がしたそうです
  …フロントで何かぶつけたかな…それとも
いいや、ここは田舎の山道沿い、こんな遅い時間に人が歩いてる訳はない。
それでも……
どれくらい凹んでるのか、一体何にぶつけたのかな、
と、気になり出したら止まりません。
けんちゃんは二百メートルくらい進んでUターンしたそうです。
ライトを点けてバンパーを見てみました。
   あら~ かなり凹んでるよ
そして何か物体が転がっていないか、周囲を確かめました。
しばらくすると後ろからライトバンがやって来て
灯りに照らされたのは皺だらけの顔をした野球帽おじさん
脇のほうに倒れている獣らしき物体を、う~ん、う~ん、
、と重そうに運んでいきます。
そして、モノの見事にライトバンの中に放り込みました。
    まだ子供の猪でした。
猪はピクリとも動きません
けんちゃんは咄嗟に声をかけたそうです。
  あ、おじさん! それ僕の……





自由詩 あ、それ僕の、 Copyright アラガイs 2024-09-24 23:08:51
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