メモ
はるな


わたしは病院に行く用事をひとつ飛ばして、ろくでもない約束のために着飾っている。意味のないこと、何にもならないこと、だけどそうするよりほかないこと。駅のパン屋は混んでいる。ここには気持ちよく声をだす店員がいて、その子の列にみんな並びたいのだ。でもだめ、誰が当たるかはわからないし、だいいちもちろんお休みしてる日だってあるから。
このあいだのデートのとき(それはきょうとは違う人だったけど)、靴底がべらんと剥がれてしまって遅刻した。片方だけミスターミニットのスリッパで、駅のベンチに座って、繋がれた犬みたいな気持ちでいた、迎えに来てくれたらいいのにねって思いながら。誰に迎えに来てほしいかなって考えながら。でもとにかくきょうはその日ではないし、靴底はきれいに修理してもらったし、暑いけど、まだ雨も降っていないし。約束があるのはいいことだ。着飾っていく場所があることも。それがなんの意味もないのもいいことだし、そうするよりほかにできないとわかっていてすることももちろん素晴らしいことだ。

白状するけど最初から行き止まりだとわかっていて角を曲がった。


散文(批評随筆小説等) メモ Copyright はるな 2024-09-18 17:42:29
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