名は体を
木屋 亞万
言葉には名前を書けはしないけど
自分から出たものならば
すでに似たのがあったって
悪いことではないだろう
昼と夜の献立が
被るくらいの話じゃないか
働いて帰って眠って
働いて休みは遠い
働いて他の誰でもいいものを
毎日毎日働いて
対価のはずの給料も
暮らすだけで消えていく
存在の芯から
脱いだ靴下の先まで
愛してくれる人なんて
いてほしいのにいないまま
希望や光にまみれた歌の
くどさは人工甘味料
ひねくれた子どものころに
ここに来たもんだから
もういい年になっても
子どもと変わらない
斜に構えては虚勢を張って
テントは骨も皮もずたぼろ
吐き出した言葉でできた自己像の
脇腹当たりのひとかけを
ジェンガのように引き抜いて
日なたで透かしてみたけれど
まだ濁ってる
劣化したプラスチック
傷だらけ
もっと夢とか
希望とか
ファンタジーとか
出て来いよ
ガラガラまわす抽選器
この心の穴からは
腐った暗い球ばかり
残り物の言葉を集めて
弁当につめれば
あまりうまそうじゃない詩が
今日もできあがる
人に聞かせるほどじゃない
置き場に迷う老廃物だ