落とし仔
ただのみきや
こらえ切れずこぼれ出す
涙のように 雨は
地を打つ哀歌
屋根に踊る陽気なリズム
暗い雲から紡がれ
眼差し次第で宝石よりも燃え
明日は乾く水たまりに
つなぎ蜻蛉が卵を下ろす
幻に映る空の青さ
幻に寄食するあかね色の未来
わたしたちの夢のその隣
誰にも見られなかった夢の抜け殻
色彩は疑問符みたいに震えていた
一輪の秋桜がささえる虚空の重み
一輪の秋桜がたたえる恵みの深さ
ゆれ惑い つめたく灯った
うるわしき天秤の群れよ
かなしみは祝祭
かなしみは蜂蜜酒
因子たちはみな仮面を被り
酔うほどに人は理屈を舐める
非在をことばに置き換え続け
延々と殷々とないものを歌う
(2024年9月4日)