【渓流】 ボウズの朝
レタス

午前五時山女魚やまめのポイントに辿り着く
水はゴォー ゴォー と鳴り響き 渦巻いていた
そこには先客が4.5mの竿を振っていた
ぼくは竿を出さず
ボトル珈琲を飲みながら彼から離れ様子を見ていた
やがて先客は竿を納め
ぼくの所にやって来た
八十歳くらいの彼と挨拶をすると
両腕で×印を示し
昨夜は豪雨だったとのこと
朝食のおかずにしようと竿を出したが
朝食は昨夜の残り物と味噌汁になってしまったと言う
何処からやって来たのかと聞くので
T市ですと答えた
随分遠くから来たんじゃのぅ…
せっかくじゃが今日はこんなありさまで駄目だ
明日になったら水も引くじゃろうが…
彼はゆっくりと去って行った
ぼくは6,1mの竿を持ってきていたので
微かな希望が湧いてきた
竿を出し 身支度を整え
奔流に仕掛けを送り込んだ刹那
コツコツとアタリがあった
瞬時にあわせ
ブルブルと竿が反応した
重みが無い
案の定10cmくらいの稚魚だった
何回竿を振っただろう
稚魚しか釣れない
他のポイントも探ってみたが
竿先はピクリともしない
諦めて大石に座り
コンビニのツナマヨおにぎりとハムサンドを食べた
こんな日でもおなかがいっぱいになると納得できた
明日に賭ける
ガソリン代もバカにならないけれど
明日の豊漁を夢みていよう




自由詩 【渓流】 ボウズの朝 Copyright レタス 2024-08-26 17:02:13
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