完備 ver.2

あなたはくちびるを固くとじて
わたしは
かみなりをきいていた
無人でない駅のひとごみ
ベンチに残る
前のひとの温度

夏 情欲とみまがうほど
はげしい雨が降って
わたしは乱雑な鞄のなかに
折り畳み傘を探していた
あなたは
消してはならない炎のように
愛を庇った
ほっそりとしたゆびで

夏 愛とまちがうほど
はげしいかみなりをきいていた
あなたはくちびるを
固く 固く とじていた


自由詩Copyright 完備 ver.2 2024-08-18 05:58:59
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