Interlude。
田中宏輔


一匹の猿が
(リルケ『マルテの手記』第一部、大山定一訳)

花に見惚れている。
(ゴーリキイ『レオニード・アンドレーエフ』湯浅芳子訳)

夢を見ているのだ。
(リルケ『愛と死の歌』石丸静雄訳)

なにがそうさせるのだろう?
(ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ『春とすべて』19、河野一郎訳)

その獣は
(ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』上、河島英昭訳)

痩せたふるえる手を差し伸べた。
(ロート『ラデツキー行進曲』第三部・第十八章、柏原兵三訳)

なんだって花をむしるんだい?
(ガルシン『赤い花』小沼文彦訳)

知らない。
(マリー・ノエル『お前の場所を探しに行け』田口啓子訳)

知っちゃいないさ。
(コルターサル『石蹴り遊び』41、土岐恒二訳)

そういえば、
(メーテルリンク『青い鳥』第四幕・第八景、鈴木 豊訳)

いったいどこへ行ってしまったのか?
(ベールイ『銀の鳩』第I部、小平 武訳)

哀れな小さなハンカチよ
(ギー・シャルル・クロス『あの初恋』堀口大學訳)



自由詩 Interlude。 Copyright 田中宏輔 2024-08-18 00:28:27
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