草加健康センター
形代 律

八月の
草加健康センター

高温のサウナで
汗を流していると
空襲の火の海で逃げ惑う人々を
想像する

熱い 熱いと
泣きながら 親や子を亡くして
祈りながら川に飛び込んだひとが
灼熱の水に焼かれる
いまやかろうじて虚構で
伝えられる絵図だが

熱い 熱い と呟いて
わたしは約束の冷たい水にほどかれる

彼岸に
何かをとどけられるのなら
火の中では決して咲かない花を添えて

あなたが得たくて 得られかった
水を手渡したい

わたしのたなごころに溢れる清らかで冷たい水を
死んだあなたと分かちあいたいのだ


自由詩 草加健康センター Copyright 形代 律 2024-08-11 22:23:56
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