蚊取り線香
本田憲嵩
蚊取り線香、
あまり目立たないけれど、
いつも夏には何となくあってほしい、
そのぐるぐる、
夏のなかの秋のような、
やや癖のある、
つよい香りの風情、
線香皿のうえで、
灯した先端の赤い光から、
煙体の蛇が抜け出てきて、
やぶ蚊を何匹も執拗に咬み殺してゆく、
そんな静かなる狩猟者、
あるいは噎せかえるような、
野外の草木の匂いと絶妙に混ざり合っている、
サマーキャンプの夜のおもいで、
やっぱり欠かせないなにげない、
そんなやや癖のある夏の風物詩、
自由詩
蚊取り線香
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本田憲嵩
2024-08-11 02:31:13
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