空は雷で泣く
マッドビースト


 見上げれば空には
 鉄や石の塔が何本も突き刺さっている
 破れれば空は泣く
 雨は涙ではない
 あれは血だ
 空は雷で泣く

 薄暗い空が一瞬だけ光る
 思いつめたようにだ
 怒りだろうか
 悲しみだろうか
 透明な世界から
 感情が圧縮されて
 具現化する 
 光っているのは感情だ  

 怯える子供達は
 一瞬の光に思わず空を見上げる
 朝が来たと思う
 希望を持つ
 次の瞬間頭をいっぱいにする轟音に
 世界から隔絶される
 縋りついているはずの母親の膝さえも
 遠く暗闇の向こうに遠のく
 子供達は雷に怯えているのではない
 孤独に怯えているのだ
 その瞳もまた光っている

 雨は涙ではない
 あれは血だ
 物質なのだ
 涙は感情の結晶
 空の涙は痕を残さない
 光って消える
 一瞬世界に吐露し霧散する


未詩・独白 空は雷で泣く Copyright マッドビースト 2005-05-21 23:32:31
notebook Home 戻る  過去 未来