漂白
ミナト 螢
世の中が白くなる
男の人の髭も
女の人の靴も
ゴツゴツしたものが嫌われて
つるつるしたものが好まれる
私たちは幾つもの坂道を
乗り越えて来たはずなのに
未来へ続く道は
平坦な方を望んでいる
そんなに優しいものが良いかい?
そんなに綺麗なものが好きかい?
棘のある言葉は避けられて
それでも何かに刺さりたい
心はナイフを近付ける
誰かの発言を聞いて
気持ちの良いまま
死にたい人がいて
その人の最期は
目を閉じているのかなんて
全然興味はないけど
あぁ、いつから世界は
汚れを映す鏡を
曇らせたのだろう
溜め息や涙で
見えにくくなった明日に
何の変化も起きないまま
歳を重ねていく
本当のことって怖いから
誰も覗きたがらないし
見て見ぬふりをする
淡くて白い世界の
儚さに酔いしれながら
そのくすみを取るために
私はタオルを絞る