きみとクロワッサン
soft_machine
くちびるの動きが多彩なきみ
曖昧にはじまり唐突に終わる
雨があがって緑に固まりかける間に
また飽きもせず芽吹くきみ
何度も沸騰する世界の傍らで
きみが笑って見える
泣いているようにも見える
渇きを知らない喉を通して疑問とも思えない疑問を
繰り返し投げかけるきみ
一番高価な果実を
迷わずえらぶきみと
昨日の過ちをどう計ろう
明日の予定をどう記そう
どこまでも本気に
無邪気なふりして
たっぷり吹きつけた絵の具の流れ具合が
自分たちの意思なんじゃないかと
個室と外界の境いに漂う
やわらかい金属に舐められ
かたい繊維に絡めとられ
それでも心から通じあえるだろうか
クロワッサンとコーヒーくれ
そう呟くだけのきみ
そろそろ
人としての痛みも限界がきているのではないか
突然、何かに気づいた風に泣きじゃくったかと思えば
素早く瞬いて
港を見下ろしている
風のはやりを全身で受けとめながらいつまでも歌う
誰かにむけ、きみがまたねと手を振る
だからぼくは、ぼんやり頷けるのだ