独裁
A道化





帰り道は
ひとつの
冷たい時代でした


足音ひとつのアスファルトを、両側から
音も無く包んでいた夏野菜の畑
あ、それならば、と


或る母の或るひとつの手に
直接実るように正しく夏野菜が包まれたなら
夏野菜が、夕餉の支度を始めるすべての手に正しく包まれなくとも
或る母の或るひとつの手に、ああ、あの手のひらに
直接実るように正しく夏野菜が包まれたならそれで、それでいいと
思ってしまった、思ってしまった、思ってしまったのです、ああ
わたしは


ああ、わたしは
ひとつの冷たい時代の
ひとりの独裁者でした



2005.5.21


自由詩 独裁 Copyright A道化 2005-05-21 20:38:02
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