僕らに告ぐ
森 真察人
全時空の僕は開眼したまえ全て雨粒は矢たとい母と姦淫しようとも一向に矢は止まぬ一つの悲劇につき作る詩は三編までとせよ。両の目を刳り抜こうとも生まれながら両の踵が不具であろうとも矢は降る全時空の僕は不具者だ。たといコミュニストの脳とファシストの脳とを同じ頭蓋骨に詰め電流を流そうとも僕が猿の頃にモノリスに触れたあの瞬間から(或いは開闢の瞬間から)全存在は他者にとって不具であることを諒解したまえ。悪魔󠄁と闘おう! 然し殺してはならぬ! それは僕にはキリンの姿に見えるけれども四十万年前の僕には雷の姿七十六億年後の僕には太陽の姿をしているだろう。悪魔󠄁と共に生きよう! 超臨界涙は詩であり数式である必ず僕の言葉で数式を綴り僕の音で楽器を奏で僕の線で形を捉えよ。常に魂を二つの方向に引っ張ると良い! 最良の革命を瞑想しながら皿を洗いたまえ! アトムたる弦を夢想しながら雑草を抜きたまえ! 生きよ! 生きよ! 恋せよ! 命は短かろう然し死と病の克服の時こそ真に我々の時間はゼロとなる。十二指のピアニストが華麗なる大円舞曲を弾く日がもう近いルーマニアのピアニストが殉死したあの! それが嫌になればパイナップルの缶詰をたらふく喰らいたまえ。耐死仕様の車で男が追ってくるかも知れぬ然しバニラ色の空など存在しない僕よ決してダイナマイトを頭に巻き付けて爆ぜることなかれきっと僕は叫ぶだろう
こんな死が!
僕らにこの詩の統一を委ねる
僕はもう映画館で寝るとしよう
死のような眠りの後に
僕は新しい詩を作りはじめる