けがされもの
秋葉竹



 

いったいこのちいさな世界には

なんにんの偽善者と
なんにんの偽悪者とが

いるのだろう?


なんてことを考えてみたこともある


天災のあとのような
悲しみしかみえないこの両目を
だから
閉じつづけていたこともあり

人災のあとのような
悲鳴しか聴こえないこの耳を
だから 
塞ぎつづけていたこともあり

いま
この寒い夜に
凍えていたりはしないだろうか?
偽善の心を
みずから恥じたりは
していない
だろうか

そして

偽善という
ひっぺがしたあとの
みた目は
まるで悪に近いような
悲しげに揺蕩う心も

でも

じつは

悪なんかじゃないんだ

それはひとつの 

善の形なんだ

そう想えればこそ

いつだって世界の夜は明けるんだ

ひとを

愛したいな

ひとの

こころを

信じたいな


愛しいひとを心から
痛がって嫌がるくらい
ぎゅーって
抱きしめたいな
怖がって勘違いするくらい
ぎゅーってぎゅーって

抱きしめたいな


いったいこのちいさな世界には

なんにんの偽善者と
なんにんの偽悪者とが

いるのだろう?


なんてことを考えてみたこともある

考えても

仕方のない夜を

砂利や小石やガラスのカケラが
鋭くつき刺すのも無視して

走りつづけて行ってやる


ねぇ

僕の心の中に住む神さま?

僕は嫌われたり嫌がられたり
憎まれたり貶められたりするのなんて

へっちゃらだよ?

だって僕は
最悪の偽善者だし
最弱の偽悪者だと
じぶんでじぶんのことは
知っているからね

でもね

そんな僕でもね
ひとの心の隙間に入り込んで
痛さや辛さや弱さや儚さに
ゆめをあたえてあげたいな
なんて
ゆめをみたりするんだよ?



花の咲く
澤に風吹く揺れながら
悠々と生き穢れて死にたい











自由詩 けがされもの Copyright 秋葉竹 2024-04-07 23:25:59
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