夕焼けのうた
秋葉竹




  

山嶺に夕日が沈もうと
雲はまだ
夕焼け空に浮かびつづけている

寂しがりのオレンジ色から
静かに終わる紫色へ
ひととき
ひととき
色を変えてゆく

ありえない奇跡を
みせてもらったわけでもないのに
こころの芯まで
やさしく撫でてくれる

夢の中の夕焼け小焼け

なにか香ばしい匂いが
してくるみたいな
でもそれがなにの匂いなのかは
ぜったいにわからないみたいな

微笑むあなたの横顔
だけじゃなくて
嘘みたいな涙まで
頬に伝えた?

ガラス窓に寄りかかりそうになる
銀の一輪挿に白い花
散るまでは淡々と
佇んでいるだろう


むかし
あなたとふたりまっさおな海で
泳いだ夏を
なぜか想い出したよ

パラソルのした
夜を楽しみに
ちいさく祈るあなたが組んだ両手が
まるでいちりんの花みたいに
まっしろだったから
その貴さを
感じさせる
その姿に
無邪気にみ惚れてしまったことを


すべては
はじまり
はじまりは
おわり
そして
夢の中の夕焼け小焼けも
ときとともに消えてゆく

ときとともに
すべては
はじまり
はじまりは
またときの流れをえらび
ときは流れ流れ
そしてときはまた
はじまりのはてに
おわり
おわる









自由詩 夕焼けのうた Copyright 秋葉竹 2024-03-21 19:50:18
notebook Home 戻る  過去 未来