ベルリン
千月 話子

今頃は、さらさらした風が吹いてきて
いつも 左肩から
あなたを感じる匂いが します。




昨日 通ったことのない
知らない道でデジャヴした
山吹色の花咲く庭の
崩れかけた壁の上

少し汚れた白い猫が
光りと影の境目で昼寝をしていた
ポートレートのような風景を
同じ目線で見ていた気がする

静かな午後 平和な
「ベルリン」と私が付けた名前は素敵?




思い馳せ 想いがこの空間の風に乗り
私の右肩を通って行っても
今は その反対側で笑っているような
陽だまりが あまりに心地良いので
ケンカしたしたことも忘れてしまった
揺れる花びらと少し長い影
寄り添って優しい
頬の温もり ふたつ




誰もいないので くるん と回ります
誰もいないのに 空ばかり見ています


 そばに居るなら 私を呼んで
 美しく泣けない 私を呼んで


今は少女の膝の上「ベルリン」と
私の付けた 猫の名前も。









自由詩 ベルリン Copyright 千月 話子 2005-05-16 23:35:37
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