帰る
こしごえ
風光る風のささやきに悲しみ一つ。
悲しみはどこに帰るのだろうか
原初から欠けている魂という命と共に
光る 光る
この大切な悲しみ
未来の今も私は、今を未来に
忘れ去って逝く。忘れたくない命。
この魂は
この体を借りている。
雲は風に乗り千切れて
鳥は風に乗り円を描く
これも運命、天の自由だ。どこかのここで涙が零れた。
欠けている魂という命が涙で満ちる
悲しみをていねいに聴く。
ずっと未来の世界に私はいない
けれどもあなたはここにいる
いることで 全てだ
いないことで 全てだ
全てが今だ 全てはつながっている
(でもね、魂は欠けているから何かを求めるのよ)
悲しみは 光る風に乗り、
悲しみは 静かで深い愛に帰った。
さようなら ありがとう、と愛から声がした。
私の命も どの道 愛に帰る。
止まっていた形見の腕時計の針が 人知れず突然動き出して
※ 初出 同人詩誌『反射熱』第13号(2023年10月20日発行)