詩人はいつも美しい
家畜人



今日も 鏡をみると 病人の
あおじろい顔がうつっている
あおじろい あわれな 人生に
すてられたような 顔が
ぼっとして なにか 古びて
うつっている



女はいつも うつくしい
詩人は なおうつくしいのだ
詩人は いつも 青のすきとおる 風に吹かれ
ひろびろとした海のうえ
防波堤のさきに ぽつんと たっているのだ
風が今日も つらい
人生も つらい
生活も つらい
あわれな 詩人は みな病気だ


あぁ だから いつの世も
詩人は うつくしいのだ!


今日も詩人は あわれな 病人です
あわれだ あわれな罪人だ
私の手だ 手は美しい 詩を書く
目は美しい 詩を見る
口は美しい 詩をうたって 
うたって 今日も
どぼどぼ 己の陰惨な生活の 血をはくのです
かわいい  かわいい あおじろい 病人は
いつも詩人です




あぁ 詩人というものはいつもうつくしい
うつくしい ひろびろとした
海なのです
海の青なのです!



       追詩


 
    『もはや 私の世界は常人の生活に穢され
      私の白鳥は湖の鏡から 飛び立つ!
       言葉の暗黒は乱れ狂い
        天体の端で三日月のパイプをくゆらしている!』



〈今日も、淋しい、陰惨な、生活が始まりました。私は白鳥の夢を見、醒め、暗黒に窓が湿っているのを、見ます。あぁ、三日月がパイプを吹かし、今、暗黒の中に、私の小さな情緒が、水面を蹴って飛び立ちました。あぁ、哀れな詩人はいつも病んで美しいのです。いつの世も、詩人というものは、ひろびろとした海のよう、美しいのです〉




自由詩 詩人はいつも美しい Copyright 家畜人 2023-11-17 14:49:11
notebook Home 戻る