よくよそ見する子供は今日も
妻咲邦香
郵便配達員のしていた服装を
頭のてっぺんからつま先までも
覚えている限り言葉にしながら
ねえもっと夢のある話をして、とせがむ
そのあと決まって
死ぬって甘いよね、とも言っていた
持ち上げられて落とされて
どっちにしたって怒る、だから
どちらでもない以外は選べなくて
ズルくならなくちゃ、私たち
ヒキョウモノにならなくちゃね、と
同意でも求めるように深爪を気にしてる
地図にない海の黒さを時々思い浮かべては
それは次々と止められていく明け方の夢のようで
並べられた冷たい毛布の上
体内時計を外されて朝の言葉を喋らされる
これから梟の子守りは誰がするんだろね、と
ヒソヒソ声で噂してたら
もういいよといきなり肩を叩かれ、光に溶ける
そうするしかない国へ
よくよそ見する子供は今日も
目抜き通りで太陽と間違われ
防犯カメラの指先で軽く弾かれた
考えてみたら私だって確か
そんなだったね
ご先祖様の見ている手前
尚更
寒い動物の夜が来て
怖がる乱獲の夜もまた訪れる
また別の日には違う袋の中身が楽しみで
それなりの舟で誰かと遊んでる
自らの仇でも討つかのようにして