どらごんのこども
TAT
ちょうど今日みたいな
雨の夜だ
詩が化け物に変わるのは
悲しくて
苦しくて
淋しくて
切なくて
空しくて
まるで
空から撃ち落とされて
殺される前のドラゴンの子供のように
のたうち回って
引っ掻いて
暴れまわって
もがいて
あがいて
そんで炎をちょろっと吐いて
首を落とされる
心臓は干されて妙薬になり
胃は惚れ薬に
腸は上等なロープに
爪は炒られ磨かれ一等弁論官のバッジになる
皮は靴に
翼は最高級の画材に
脾臓は強壮剤に
角は楽器にされる
こどもの竜は
死ぬ前の恐怖
石畳の刹那
とびきり美しい和音を偶然
喉から鳴らす
ちょうど今日みたいな
大雨の日に
詩を書くんなら
死んでも最期まで一気に書け
駄作でもいいからピリオドをきちんと打て
じゃなきゃお前詩に憑かれるぞ
呑み込まれて二度と戻って来れなくなるぞ
途中で書けなくなった詩ほど怖いものはないんだ
途中で書けなくなった詩ほど恐ろしいものはない