くちからしたむ
あらい

港の全景は墨色に陽経つ
  滴  
    /その視線を誂えた案は圧縮された生活に渇き

              礼であり言葉にならない
       青褪めた外には同情の余地も吹きだまる
      幼稚なインキのすこしを触れ座っていたが
          ながいこえが透き通ったばかりに

お告げなどなく ひとたまりもない日々から
朽木鳥がおしゃべりに出迎える

     実態もないもの、そのじかん
ちいさく、ほそめていっても、また、常に同じものだ
     いずれにせよ姿勢を崩し一見

     どんなことであるか、形として
     意味を落とした

  様子を窺うと正しい処から遠ざかって
  実体を無くしてから、かがやくとも腐すとも


山羊が小屋を超えるとき

苔の上に鴉が死ぬ


   残忍なのだ
   悪いと知ったら顔に似合わず
   ひととしてだれか、
   出来事として消えてしまわないだろうか


旅をしているなんて

暢気なこと雄弁におしゃべりしている

鴎は留まっている空とひかり、あるように

                 しろく こなごな
                 このいまを巣食い
                 その色沢をうずめ
                ひとかたまりにして
                煙にいうその建前よ

                抜けている、因果紙
                 遠くに城、皓い白

そこから うかんでくる わたしの小舟

        まだながしたくはない
  不可解な点滅に憑っているだけだと
              これらが、てまえ

酔っている。そうすれば真ん中で選ている
彫像は絶えず嘔吐ヘドを置き去る
泥ついた羊歯、得意げな夜目、くだらない白い泡


あゝ地下には、おおきな――
    欠けた月 割れた月、溢れた月、煽れた月
    もう新月、深淵を除いただけ、欠片もない
         咲守、大嵐の後 朝光 柊の花と霜
         稀に出逢うから 蘇芳 に思い馳せ


岩魚が山猫に喰われるのを、蚤は知らないだろう
     
じたばたと永くこわれた
みすぼらしい入り口から出口へ
わたしへの帰途かえりみち
不安ささやかに滾り頭から離れない舞いに
未来このさきの夢というはなしは、つまり


自由詩 くちからしたむ Copyright あらい 2023-11-16 22:22:28
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