柿
本田憲嵩
まだ硬い、
橙色の果皮をつきやぶって、
少しぬめっている、
その冷ややかさ、
滲み出てくる、橙色の果汁、
ほんの少しだけ粘り気のある、
硬めの橙色の果肉、
に挿し込まれてゆく、しろい歯の快感、
熟しているというには、
まだ、ちょっと早いくらいの、
硬いものは、どうしてこんなにも新鮮で美味しい、
林檎でも柿でも、
禁断の園の果実のように、
おもわず木の枝から捥ぎ取ってしまう、
その伸びざかり、
浄土とはまだまだほど遠い、
西のお寺からそよ風にのって鐘の音が無常に鳴り響いてくる、
橙色の柿を食べながら、
橙色の柿のようにかがやく、夕陽が今日も沈んでゆく、