「先週の生産状況は以上です
　次は工場の修繕計画の件ですが
　和式トイレへの改修案が出ていますので
　工場長よろしくお願いします」

「はい、なんのこっちゃと思いますよね
　社長から各事業所に未来への投資案を
　出すように指示がありました
　ここは工場なので生産設備は揃っていて
　更新計画もあるので
　未来に投資するものが思い浮かびません
　みなさん何かありますか？」

「…いや、特には」

「はい、そうですよね
　部長以上で検討した結果
　トイレを洋式から和式に
　改修しようという案が出ました
　生産現場では腰を痛める事例が頻発しています
　なぜだかわかりますか？

「…いや」

「はい、答えはハムストリングスです
　太ももの筋肉ですよね
　昔の日本人の腰は鋼のように屈強でした
　今は私もそうですがガラスのような腰です
　なぜかというと昔は和式トイレでしゃがんで
　毎日ハムストリングスが
　鍛えられていたからではないか
　そう言う意見が出ました
　確かに、そう思いませんか？」

「…そうかもしれません」

「はい、そう言うことで
　和式トイレにすれば
　毎日ハムストリングスが鍛えられて
　腰を守ることができます
　腰痛持ちがいない工場という未来に投資する
　これだなと思いました
　いかがですか？」

「…あの、別の意味で賛成します
　事務棟では離席して行方不明者が多いです
　個室トイレが30分ぐらい空かないこともあります
　本当にしたい人ができない問題があるので賛成です」

「…ちょといいですか
　個室でスマホ見てサボる人はいますが
　リフレッシュするための
　必要悪だと思いますが」

「…あの、サボったり
　持て余すような仕事配分をしている
　管理者の問題であって
　逃げ場があるから
　顕在化していないだけだと思います
　働き甲斐がないのは
　その人の未来を奪う事になると思います」

「はい、ありがとう
　洋式トイレが
　働き甲斐にまで関わっているとは
　認識していませんでした
　会社を持ち上げる
　管理職のハムストリングスを
　どう鍛えるかだなぁ」