mathematicians
完備 ver.2
置く、ゆびに
わかるあなたのよわひ、
わたしの
永遠に接続できない指輪と
結婚、結婚、結婚、血痕、
映る、くびもとの皺、
見ないふりをして
彼のくれる不等式を
解いた、三日かけて、
夜はネカフェで
あつい昼は図書館の、窓際、
彼にメールをする
LINEは教えてくれないから、
カフェで待ち合わせ
わたしの計算を見せる
うんうんと頷き、
自分のノートを取り出した
書き終えるまで見ていた、
まだ若いつむじや、机を伝わる振動、
あっという間にわたしの
証明を書き直し
よんぶんのいちに圧縮した
「ありがとう。
謝辞に名前を入れます。
現在の所属を教えてください。」
現在の所属、
現在の所属? 現在の所属。所属、男の、
ペニスを咥えることでしか
満たせない空洞がある、わたしは
わたしのいるこちら側と
あちら側があり、裏返る座標が
波動になる
波をかぞえる、ひとつ、
ふたつ、みっつ、また、裏返る座標、
先月引っ越した
20年分の計算ノートを半分、捨てた
まだ、私が20代で、
印刷した論文と計算ノートを
スーツケースにパンパンに詰めて引っ張っていたころ、
インターネットで知り合った人の家を転々とし、
床に落ちた薬を飲んだりしていたころから
ついぞ、論文ひとつ書くことができなかったが、
私は、ただ、数学者になりたかった