涙の行方
リリー
すすきの穂が暮れ終わって
秋が もはや殆んどない
御寺の緑に
ふとこぼした涙は何処へ行ったのか
荒々しい血汐のざわめきが
遠い日のことであったと
気附いたのか
一心に
涙は 何処へ行ったかしらと考えている
確か それは昨夜のこと
躰を駆ける
潮汐のいきどおり
貴方の去った後
たくましい躍動に疲れているのを発見する
かすかに汗にじませた胸に
身を休めた時の
虚しい かなしい喜びを思い出し
なまめかしさに似た
けだるさが訪れ
無性にねむりを欲するのだ
昨日と今日の間の
何と果てのない遠さ
私が再び涙ぐむ時
本当に 秋がもうない事を心底知っている