朝顔
たもつ
ほつれていく声
せめてもの手向けに
ひと、手を振る
朽ちた荷を載せて
船は港を離れていく
その先には何も無い
淀みのない坂道の途中で
あなたはそのように
教えてくれたけれど
保育園のお庭に朝顔が咲いたと
わたしは今年も
言いそびれてしまった
せめて正しい手順の
食事を作りたく思い
記憶と思い出を
取り違えることもあった
生きることは
曖昧な輪郭しかないから
どこかの窓から見ていたのは
いつも外の景色だった
あなたは優しい声をたてて
ひとつ食べた
(初出 R5.10.4 日本WEB詩人会)