湖と蝶
リリー
飛びこまないか
と貴方の声が 重かった
飛びこまなくたって
水面に 映った顔に見入るだけで
水底に横たわれる
と私の声が かわいていた
ときのすぎゆく早さは
相寄った魂の離れゆく早さ
どん欲に互いの水気を吸い合って
美の覆い はぎとって
抱き合った手と 指と指とが濡れて
霧雨の 仄かにかげる
湖を舞う
こごえた心臓を
激しく引き裂いて
冬の息吹き、吹きこもう
夜明けの
東
岸はうっすら けむった一すじとなり
空と水の他に何もなかった
私達さえ もうなかった
自由詩
湖と蝶
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リリー
2023-10-01 11:58:54
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