平和絵巻
atsuchan69
エロ可愛いソルジャーたちが拉致目的で追いかけて来る。ついさっきは、あわやオバサン・ソルジャーに噛みつかれて死ぬところだった。ソルジャーたちの背後に見える太々しい顔があまりにも巨大なのでボクはそいつのことを巨大ちゃんと呼ぶことにした。巨大ちゃんは銀行や重機製造メーカー、電気メーカー、自動車メーカー、誰もが飲んでるビール会社、牛丼屋さん他、多種多様な企業とも関係が深い。そーゆー見えざる支配の「圧」が顔中から滲み出ている。そして女ソルジャーたちの天真爛漫な笑顔でビジュアルに攻められると、流石のボクでも誘惑に負けてしまう気がする。街行く人のほとんどが巨大ちゃんのワイヤレス・リモート・ターミナルだった。ボクも彼女たちの下半身のためならリモートされてもかまわないと秘かに想ったりもする。巨大ちゃんは選挙活動もしているが、巨大ちゃんはじつをいうと日本の黒幕ではなかった。噂では、巨大ちゃんはすでに死んでいるらしい。じゃあ今もそこにある巨大な顔は一体何なのだろう? それは GHQ による財閥解体とともに歴史の坂を転がりつづける途方もない大きさの落石のようなもので、時代が今に移っても巨大ちゃんをとめるためには戦争以外にはないらしいのだ。しかし巨大ちゃんは口をひらけば「対話しよう」と誘う。要らねえよ、対話なんか。口を尖らせてそっぽを向いていると、「兄ちゃん兄ちゃん」と声をかけられた。「知っとるけ? あのデカイ顔のうしろには、もっとデカイ顔があんねんで」はあ? もっとデカイ顔? まさか。「あのデカイ顔はなあ、さらにもっとデカイ顔の仮面やねん」へえ、そうなんですかあ。その会話の真横で、「対話」を拒む若者が路上で悩殺攻撃された。ミニスカートのソルジャーたちに拿捕され、豪華絢爛たる施設へと連れて行かれる。そこで「朗らかな対話」を済ませた者たちは、胸に歓喜の太陽を抱き、希望の光となる選挙運動へと駆り出されるのだ。だからボクは今も可愛いお姉ちゃんや豹柄の服を着たオバサンたちから必死で逃げている。リモートされた男たちもたまに「対話しませんか」とやって来るが、巨大ちゃんのソルジャーはあくまでも女性が中心だ。「気ィつけや。あのデカイ顔は戦前からおって、ワシ等をエエように使うてきた心底悪いヤツ等の別の仮面なんやで。他にも壺売りだの降伏の化物とか色んな仮面、ぎょうさん持っとるわ」さっきのオッチャンが、またボクの耳元で何かを話したが、そんなことはもうどうで良い。次から次と、巨大ちゃんが美女ばかりのソルジャーを仕向けて来る。逃げなくちゃ! ――いやしかし、都市部も、農村も、山奥の村でさえも、にっぽんじゅうのあらゆる生活圏が、電動のリモートパンツを穿いた女ソルジャーたちによって悩殺攻撃され、男たちは胸に歓喜の太陽を抱くと、朝は乳酸菌飲料を飲み、昼には牛丼を食べ、夜にはエロ可愛いソルジャーたちと朗らかに対話をし、日々その大道を勝利の道としてゆくのだった。