夜の独り言
久遠恭子
夜は電気を消しているから
スマホの明かりだけが頼り
指先の動きだけが
生きていることを知らせてくれる
こんなに小さい機械の中だけが
わたしの世界で
波間に漂うクラゲみたいに
ふよふよと浮かんでいる
浮かんで
沈んで
透明な遺伝子を撒き散らす
ふふふと笑って
ため息をひとつ
浮かんで
沈んで
クラゲは夜の海を漂う
たぶんそのうち
溶けてなくなる
そんな生き物
ちっぽけな
透明のいれもの
ふよふよ
漂って
ただ流れていくだけ
気付かれもせず
自由詩
夜の独り言
Copyright
久遠恭子
2023-08-17 05:03:09