ホソカミキリムシマン
本田憲嵩
ホソカミキリムシよ、
君はぼくのひみつの友達、その一人、
君もまたいつの日かのぼくに似て、その身動きはまったく取れず、
やがて本格的なスピードで走行され始めてもなお、けっして振り落とされまいと、
ただただ力みながら、そのポジションに不器用な手足でしがみつこうとしていたのみ、
その哀れでとても滑稽な無様さに、
お天道さまだって君の味方などするはずもなく、
ただただつめたい迷いの風を吹かせつづけて、
やがて容赦のない逆境の夕立をはげしく降らせるのみ、
そうして溜まらずに君はあっさりといつの間にか何処かへと飛び去って行ってしまった、
ああ ホソカミキリムシマンよ、
ぼくのひみつの友達よ、
その自動車のサイドウィンドウに、
颯爽と飛び付いたまでは良かったのだけれど、
けれども、濡れている、
物干し竿にかかった、白いTシャツに、
君はしばしのあいだ憩い、
その晴れあがった空には、夕立ちがいま、
比喩的に虹をかけている、
その七色の夢の橋をためらいもなく渡ってゆけ、
ホソカミキリムシマンよ、
ああ 次世代の、
ホソカミキリムシよ、
ぼくのひみつの友達、その一人よ、