集落
たもつ



部屋の中に集落ができた
小さな集落だった
本家、という男の人が話にきて
畑で採れた作物を
いくつかくれた
学校が無くて困っている
というので、近所の小中学校と
市役所の場所を教えた
これでヨシハルんとこも助かる
と加工品の瓶詰もくれた
綺麗な水が湧いていて
冬は雪深くなるそうだ
本家の人は包まるように
こぢんまりとしたお辞儀をして
帰っていった
今度遊びにでも来てください
と言い残していったけれど
初めて聞くその場所に
いくつ列車を乗り継げばたどり着くのか
見当もつかない
夜は集落を避けて布団をひく
耳元のどこか遠いところから
湧水が水路を流れる音が聞こえてくる




(初出 R5.7.5 日本WEB詩人会)



自由詩 集落 Copyright たもつ 2023-07-09 07:01:28
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