集落
たもつ
部屋の中に集落ができた
小さな集落だった
本家、という男の人が話にきて
畑で採れた作物を
いくつかくれた
学校が無くて困っている
というので、近所の小中学校と
市役所の場所を教えた
これでヨシハルんとこも助かる
と加工品の瓶詰もくれた
綺麗な水が湧いていて
冬は雪深くなるそうだ
本家の人は包まるように
こぢんまりとしたお辞儀をして
帰っていった
今度遊びにでも来てください
と言い残していったけれど
初めて聞くその場所に
いくつ列車を乗り継げばたどり着くのか
見当もつかない
夜は集落を避けて布団をひく
耳元のどこか遠いところから
湧水が水路を流れる音が聞こえてくる
(初出 R5.7.5 日本WEB詩人会)