ティアドロップ・メモリー
ツチヤタカユキ

文)地球に迫り来る隕石を、
飛び蹴りで爆破するためだけに作られた私。
生まれた時から右足に埋め込まれたリーサル・ウェポン。
ブランコから着地した時、誤爆して地球は一回終わる。

前世が残留するようになった世界で、
王将の換気扇の生まれ変わりの君は、
顔面に油で汚れた換気扇のプロペラつけて生まれてきた。
ずっと回転し続けているから、
自分がどんな顔なのかも知らないみたい。

私は前世がサイボーグだった頃の名残りで、
体から少しだけエンジン音がする。
博士が私に入れ忘れた、人を愛するという感情を、
初めて教えてくれた君。

IQ180の私は、
ある日IQが1秒ごとに下がっていく病にかかって、
180秒後、君に伝える『すき』の2文字に、
私の全ての想いを込める。

君が死んだ時、私が流した涙のしずくは、地球と同じ大きさ。
南極で、号泣した瞬間に凍り付いて、
地球の横にできた、氷漬けのもう一つの地球。
前世の頃から右足に埋め込まれた、
リーサル・ウェポンが付属した、飛び蹴りで破壊する。

あの世に行く寸前の君に、「来世生まれ変わるもの決めてくれ」って言われて、『二酸化炭素』って答えた瞬間、
君が混ざった吐息が、口の中から出て来る。


自由詩 ティアドロップ・メモリー Copyright ツチヤタカユキ 2023-06-02 06:09:17
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