ファシの戦い(十二)
朧月夜

「降伏など思いもよらないことだ」マリアノスは言う。
「さすれば、わたしはまた幽閉の身となるであろう。
 それよりも心配なのは、ミーガンテが再び王位に返り咲くことだ。
 そうなれば、ファシブルは必ず滅びの道を行くことになる」

「では、クールラントとラゴスに援軍を要請してはどうでしょうか?」
「それには、数日かかる。その間にファシは占領されてしまうことだろう」
「では、どうすれば良いとお考えですか?」
「まずは、元老院を説得することだ。そして、魔法石を解放する」

「まさか! それでは街を覆う結界が消失してしまいますが?」
「今さら結界など無意味だ。アースランテの軍勢は、
 すでにファシの街に侵入している。結界は我が軍にも作用してしまう」

「分かりました。では、元老院にかけあってみることにしましょう。
 しかし、上手く行きますかどうか……」ガイゼルは答えた。
「生死がかかっているのだ。元老院の議員たちとて、死にたくはあるまい」


自由詩 ファシの戦い(十二) Copyright 朧月夜 2023-05-24 15:29:57
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