錯綜する思惑(十二)
朧月夜

間抜けな盗賊ヨランは迷っていた。
イリアス嬢さんの居所は分かっている。
カラスガラの北辺にあるバルケスの塔である。
それは、モーガン・レティウスの旧宅だった。

間抜けな盗賊ヨランは、アイソニアの騎士を抑えるべきかどうか、
悩んでいた。今、イリアスを取り戻すことは、
この戦争に致命的な影響を与えかねない。
アイソニアの騎士は、アースランテへと帰ってしまうことだろう。

それは、クールラントとアースランテの戦いを意味する。
アースランテの千人隊長として、アイソニアの騎士は無双の活躍をするだろう。
しかして、間抜けな盗賊ヨランはクールラントの人間だ。

この度のライランテ戦争を、ヨランは穏便なうちに終わらせたい。
祭祀クーラスやフランキスの思惑など、ヨランは知る由もなかった。
しかし、何か危機が起ころうとしている、そのことは直感していた。


自由詩 錯綜する思惑(十二) Copyright 朧月夜 2023-05-15 13:08:23
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クールラントの詩