白線。
田中宏輔

横断歩道の上の白線は
決して真っ白であったためしがありません。
必ず、幾多の轍が、靴の踏み跡が刻印されています。
もしも、真っ白な白線がひかれていたなら
ぼくは、その上を這って渡りましょう。
お腹を擦りつけこすりながら渡っていきましょう。
そして、渡り切ったなら、もう一度ターンして
こんどは、背中を擦りつけこすりつけ戻ってきましょう。
そうして、何度も何度も往復してみましょう。
しまいに白線が擦り切れて見えなくなってしまうまで。
ぼくが擦り切れてなくなってしまうまで。


自由詩 白線。 Copyright 田中宏輔 2023-04-24 00:05:21
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