かわいそうになりたい
秋葉竹



あのひとに
やさしくしてほしいから

そんなやさしさなんて
ただの同情だと
わかりながら
じぶんの弱さが嫌だけど

かわいそうになりたい

深夜
ひとはどうしてこんなにかなしいのだろう?
許せない過去だけが
なにかを告げるように
いつまでも追いかけてくる

なにか
生きることに
失敗したとでも
云いたいみたいに

悲しみみたいな過去だけが


運命なんて
知らないし
それって
なにのことを云ってるの?

この心の?
この体の?
この部屋の?
この家の?
この町の?
この都市の?
この道の?
この国の?
この風の?
この空の?
この世界の?
この宇宙の?

どこに
運命
って
あるんだろうね?

何度繰り返しても
何度繰り返しても
ただ
あのひとにやさしくしてほしいだけ

まざりあわない光と闇を
ちゃんと知ってるんだけど
それでもけんめいに
くるくるクルクル
かきまぜるよ


そしてちいさく
震えてしまう
希いのかけらを
きっとみつけだし
それを救いと想い
求めつづけ
さまよいつづける
その寂しさが

せめて
あのひとに
すがるような
ぶざまな哀願をみせないように

(そこだけは
最後の矜持でね)



そしてまた明るく煌めく
魂を切る
月のかけらみたいな愛情を

求めてしまうのだ


ねぇ、云っていい?

なさけないけど
云っていい?

それだけの理由で
あのひとに
やさしくしてほしいという

それだけの理由で

かわいそうになりたい









自由詩 かわいそうになりたい Copyright 秋葉竹 2023-04-18 06:06:32
notebook Home 戻る  過去 未来