手足ない鱗状のほそく
あらい

  雨露が木漏れ日に焼く夢は、泣きはらした金魚鉢に
   気まぐれな短針を見せ、白い腕は褪色を止め
  しっかりした骨格で成年を待つうちに折り重なり
   いろが付いてすっかり 変身してしまいます

一点のひかり、
それとなく展示会
         単なる通過点に過ぎないことを露呈しても
           祖を噛み締める燐光、能天気の太陽は
             ミライとともに輝き続けるとある

まっすぐでいいこでした

     誰も何も来てはならぬ街角をさえずる
              凪いている日日は薙いて暮れる
     なんや 賢い鳥や魚なんだろうと
   あなたはどうしようもなく思いながら
     草花は反抗して しおれかかって
      ラクヨウを投げかけてくるのは
               なんという腐った性根だろう

      エンドロールのように泳がせ、麻紐とノミで、
         ひらひらと出ていきます。

        なんや断続的な死が目前に迫っているが
        柔らかな風がそれを静めている
        患者の、慈愛に満ちた視線は細められ、
        ねじれた天災に気づかず
        さらににじんだ水たまりをまわし
        黒ずんだ肌を握りしめて問いかける

そうして私たちは、
いのちとは頑なのものであることを認知する

              胡散臭い人波も 片笑窪を寄せ
            朧気に見えた死相が狼煙が、仰天し、
    絶望を微かに引いた
     重なり合ういのり、
      うつくしい天使、
         眩しさの中で左を向くとき
         桟橋からの夕日、それから

        踏切から見渡せる海は夏模様
        漫画のようにきらきらとするだけ
(酸素を使い果たす擬態での強制的な暗闇と毒)
                   それは鮮やかに蘇り
               ざらめゆきとけ山と化す墓碑
        身体よりも備忘録
          かつて愚かさを嘲笑う
           右往左往する愛花 少し殺伐とさせて、

         パノラマを手にして。

それでもいきている まだいきているに ちがいないのに。
生きていかなければならないのに。
                    あなたは桜の下に
                 あなたは水仙のラインを
             あなたは静かな森の、水彩前奏曲

芝居がかったむすめの焦燥感は、海の乱反射にみなぎわと劣る

どうせへばりつく、
去るものを、追ってはいけない
彷徨う魂にしがみつき、それというもの

(2022-04-08)


自由詩 手足ない鱗状のほそく Copyright あらい 2023-03-31 00:15:55
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