孤独の形成
平井容子


1.夢のあわいにて

ホームベーカリーだけが
空虚をこねている午前4時
退屈した彗星が
1.5人分の足首をまたいでいく

死にゆくものたちが膨らませる
気球にのってそれを追いかけた



2.腐敗

しらむ空はつんとした水仙のにおい
色褪せた水色のバスタブに
蜂蜜色の湯がたうたう

あのころいくどとなく口ずさんだ歌も
いつのまにか思い出せない

あのころ親にせがんで繰りかえしみたビデオテープも
いつのまにか思い出せない



3.痛覚

服を着替えるようにとりかえた
いびつな3角形の傷が開いている

じぶんの体のどこかより
痛い場所があることを知ったペガサスは

夜明け前にはいなくなります
舟をこぎながら
またあなたに許されているわたしを残して


自由詩 孤独の形成 Copyright 平井容子 2023-03-18 13:17:08縦
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