ゴキブリ飯店
atsuchan69

やっと運ばれたラーメンに
小さなゴキブリが入っていたので
店員のお姉さんを呼んで苦情を言ったのだが、
なぜかマトモに話を聞いてくれない
挙げ句の果てには
「もう、これ以上粘着しないで下さい」と言われ、
やむなく店主を呼んで事情を説明すると
「お客さん、騒動を起こさないで下さいよ」と言われた
店主の話はこうだ――
「ウチは会員制の店で、入口に『料理には一切クレームを入れないこと』って、ちゃんと書いてあるやないですか」
本当かどうか、いったん店の外に出て確認したが、
それらしい張り紙は見つからなかった
ところがドアを閉めてから振り向いたとたん、
思わず、「あ!」と叫んでしまった
ドアの入口側ではなく、
ドアの裏側に「会員制中華レストラン 〇△◆」
●料理には一切クレームを入れないこと
そして、
●一度来店した者は自動的に会員となり、永久に退会を認めない
と記された、茶褐色の張り紙があった
「そ、そんな!」
ボクが理不尽だと訴えると
店主は意地悪そうに笑い、
「ドアの表だろうが裏側だろうと、入口のドアにはちゃんと書いてあるのとちゃいまっか」
と、ボクを睨みつけるように太くふてぶてしい声でそう言った
ああ、仕方ない‥‥どうしようもできない
ボクは幽霊のような歩みでテーブルへと戻り、
「だったらこの店で、腹を壊して死んでやる!」
悲壮な顔でそう呟くと、
滝のような涙を流しながら、
まだ動いている、
元気なゴキブリの入ったラーメンをすすり始めた




自由詩 ゴキブリ飯店 Copyright atsuchan69 2023-03-17 10:48:33縦
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